13日、芸大時代からの恩師、平野忠彦先生の訃報が届きました。
あまりにも突然の事で、門下の皆が驚き、未だ信じられない思いでおります。
今年お会いした時にはとてもお元気でしたので、本当に驚きました。
誰よりも厳しく、誰よりも優しい先生でした。
初めて先生にお会いしたのは高校の時、山形の文翔館に歌いにいらした時。
「この凄い声、聴いた事がある気が、、、」「あ、ジャングル大帝の主題歌の声!!!」。 これが師匠との出会いでした。
地元の先生の紹介で、レッスンを受ける事になり、それから、山形から東京に通ってのレッスンが始まりました。そして芸大に入り、引き続き平野先生の指導を受け励んできました。
大学院を修了する際の題材は、原嘉壽子作曲《さんせう大夫》を取り上げました。
この作品は、標題役を平野先生が初演なさったものです。初演時の映像を観ましたが、その圧倒的な存在感に、まだ足下にも及んでいない事にあらためて気づかされたのを覚えています。
大学院修了時にちょうど先生も定年で芸大を退官なさいましたが、卒業後もいつも気にかけてくださり、「マクベス」でタイトルロールを演じた際にも観にいらしてくださいました。
昨年12月、慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団の公演に、師匠がゲスト出演された際に、会場で聴く事ができました。
このとき先生は風邪をひかれていらしたのですが、聴く事が出来本当に良かったです。
説得力、そして存在感は圧倒的でした。
門下の方や奥様からご連絡をいただき、 ご自宅に伺いお会いしてきました。
とても安らかなお顔で、今にも起きてきて、「おお、井上か」とおっしゃりそうな感じさえしました。泣くまいと思っていましたが、到底無理な事でした。
先生がいらっしゃらなかったら今の僕はいませんでした。
先生、今まで本当にありがとうございました。
どうぞ、安らかにお眠り下さい。
葬儀は行なわず、後日お別れの会を行なうそうです。