昨日、高円寺に出来たソフィアザール・バロック オープン記念公演が終了いたしました。
このお話をいただいた時、以前からやりたかったことの1つ、シューベルトの時代のピアノを搬入しての「冬の旅」 を是非とお願いして、実現しました。
シューベルティアーデをイメージして始めたという駒込のソフィアザール・サロンと今回のソフィアザール・バロック。
そのイメージにも合う形で開催することができました。
現代から今回のシューベルトの時代、そしてこれからソフィアザールバロックにチェンバロが入り今度はいよいよバロックへと、そこへの橋渡しが出来た気がします。
ピアニストは、友人で信頼する音楽家である川口成彦さん(普段はそんな呼び方はしていませんが、ここでは感謝と敬意を持って”川口成彦さん”とします)に声をかけました。
川口さんとは何度も共演していますが、2010年の僕のデビュー10周年記念リサイタルではモダンピアノであるスタインウェイとフォルテピアノのエラールの、二台のピアノを弾いてもらいました。
今回は、ソフィアザール・バロックでは1日限りの、シューベルトの時代のピアノでの冬の旅。
今までに経験した(聴いたものも含む)冬の旅のイメージは一旦捨て去り、一から川口さんと作ろうと決めました。
リハーサルでも、川口さんが出してくる音楽を一旦受け止める事から始めました。
当然このピアノの魅力、個性は川口さんの方がわかっていますし、そこを引き出してもらい、そこで感じた僕なりの歌を合わせていきました。
もっとも苦労したのは「音量」です。
とても柔らかな音色。ホールのような歌い方では全てかき消してしまいます。
このピアノのに寄り添えるような歌い方を、自分なりに作り上げていきました。
ただ抜いて歌うのは楽です。でもそこには何も生まれません。抑制された世界に、この主人公の世界を見出しました。
そしてそこを突き破ろうとする波が発作のように随所に現れます。
しかし、最後に本当にそこから一歩踏み出せるのは、終曲の一番最後。
その他の今回の細かな解釈は川口さんのプレトーク、そして僕が作成し希望者にお配りしたノートに述べられています。
この作品に限らず、シューベルトの作品は、歌とピアノ、どちらが主とかは無いと考えています。一体となり、時には呼応し、時には競う。お互いに音楽を出した上で寄り添い、作り上げた先にようやく作品が出来てきます。今回も詩の事についても、川口さんと話し合いました。
リハーサル、昼の部、夜の部と3回通したわけですが、何とか、最後まで終えることができ、川口さんとも最後に握手を交わしました。
もちろん僕たちの冬の旅は、まだまだ浅いところも多いかと思います。形だけ背伸びしてもダメですし、これから、またどんどん歩みを進めて、また冬の旅へと取り組めたらと思っています。
1月13日には、駒込のソフィアザール・サロンにて、オーナーの遠藤さんのピアノで、モダンピアノでの冬の旅を演奏します。こちらは今回とは全く違うアプローチになると思います。
今回ご来場くださいました皆様、主催のソフィアザールの皆様、ピアノ搬送や調整、差し入れ、など様々な事で協力くださいました皆さま、共演者の川口さん、本当にありがとうございました。
そして、シューベルトに、今回のピアノにも、心からの感謝を。