ヴェルディ「仮面舞踏会」、終了いたしました。
ご来場下さいました皆様、ありがとうございました。共演者の皆様、スタッフの皆様、お疲れ様でした。
この演目は、縁があり、かつ縁のなかった作品です。
最初に関わったのは10年以上前。二期会の研修所を出てすぐの本公演のレナート役のアンダースタディを務めたとき。
その後、8年前にハイライト形式でレナート役を務めましたが、実際に舞台で一本やるのは今回が初でした。
研修所時代に助演でいらしていた谷川さんがリッカルド、先日の「カルメン」でもご一緒した宮川さんがアメーリア。
演出は毎回町田でお世話になってる川島さん、指揮はすみだオペラの副指揮でご一緒した吉田くん。
大変な役ではあるけど、8年前よりは確実に歌えるようになった。
今回とても興味深かったのは一番最後。アメーリアがレナートに寄ってきて、泣き、すがりながらも攻める。
ただのありきたりなフィナーレでなく最後までドラマチックな空間になり好きでした。
レナートは”クレオール”。
その意味は国によっても少し違うようですが植民地ないし副王領生まれ、または混血も含まれることもあります。
つまりは現地人のウルリカに近い人種であり、この時代通常は差別されることの多い立場。
しかしリッカルドはそういうことで判断せず、レナートを受け入れ評価します。それが今まで苦しい立場であったであろうレナートのリッカルドへ対しての絶対的な信頼へとつながります。
史実ではそのような信頼関係はなく、グスタフ3世の元近衛士官であったアンカーストレム伯爵は、サム・トムのように憎悪を抱いていたものの一人でした。
そういうこともありこのオペラの設定を史実のスウェーデンに戻す演出は違和感があり、今回のようにボストンのままであったことはとてもやりやすかったです。
そして、今回初めて経験したのは「bis」。
オペラ上演中のアリアなどのアンコールの事なのですが、流れが止まってしまったり、体力的な問題もあってなかなかやられないものです。
今回、開演の時には全く予想してなかった三幕のレナートのアリアでbisに応えやる事になり、貴重な経験をさせていただきました。アリアにも、bisにも拍手、歓声で応えてくださった皆様、ありがとうございました。
端正な歌唱と演技の谷川さんのリッカルドと、生きた役を演じられ芯のある歌声の宮川さんのアメーリア。胸を借りるつもりで演じさせていただきました。
オスカルの大阪さんは役にぴったりで、大阪さん自身の天然?な雰囲気も織り交ぜつつ頑張っていました。
ウルリカの岩本さんは通る声で存在感もありました。結構大変な役だと思ってます。
サムの大倉くんは本来明るいハイバリトンの声ですが、悪役サムのキャラクター、音色もしっかり研究してつかんでいたと思います。
トムの戸塚くんも演出の川島さんにアドバイスされた役としての所作を頑張っていたと思います。
今回この公演に僕から声をかけてシルヴァーノを演じた山田くんも、頑張っていました。
基本的に読み替えなどの変なことはしない演出で、かつ自分がやりたいことも受け入れてくださって、ありがたかったです。演出で奇抜なことをしないと言うことは、それだけ演者の力も試されるということです。だからこその価値があると思っています。
しかし、、流石に疲れました!笑
またその様な経験をする事があるのかどうかはわかりませんが、本当に、貴重な経験でした。
実は前日のGPの時には、大阪でのコンサートなどの疲れも出て体調が良いとは言えない状態でした。
夜はしっかり休めたので本番当日は問題ありませんでしたが、本番に体調を万全の状態に持って行く大切さを改めて感じました。
追記
6月にはデュトワ指揮・上海交響楽団公演の「サロメ」(上海での公演)に出演しましたし、今年も来年も千人以上の規模のホールでのオペラ公演に出演します。しかし公演の大小と価値の大小は別で、それぞれの価値があります。
町田イタリア歌劇団の公演は、規模は小さく会場も空間が限られますが、地域に根ざし、かつ非常に意欲的に活動している団体です。
団体のファンの方もいますし、オペラを初めて観たという方もいらっしゃいます。
この団体が、さらに発展していくことを願っています。